早期リタイアの必要資金の考え方において重要な2つのポイント(その1)

By | 2016年4月10日

早期リタイアがHPや記事、雑誌等で取り上げられる場合に典型的に議論される内容が、一体いくらあれば早期リタイアできるのかといった話です。これ自体、年間の想定生活費と年金開始年齢や年金額等の条件がないとそもそも成り立たない議論ではありますが、その条件を満たした上での議論だとしても、個人的に考えて、この手の議論において決定的に不足していると思う重要なポイントが2点ほどあります。

今回はこの2点について、取り上げて書いてみようと思います。

まず1点目ですが、早期リタイアのための資金をどう運用するのか(あるいはしないのか)という視点です。これは、前にエントリーとして取り上げた以下のエントリーから始まる一連の話と少しかぶる話となります。

株式投資?不動産投資?早期リタイアのための投資戦略(その1)

この一連のエントリーでは、株式や不動産への投資が必要と見なされるケースのために、主にこの両投資ビークルはどこがどう違っていて、それが我々にどういった影響をもたらすのかといった視点で書いた実務的な運用側視点のエントリーになっています。今回のエントリーではそれとはかなり趣きが異なる話で、そもそもなぜ株式投資や不動産投資等が必要になるケースがあるのかという必要性の話と、必要な場合にはそれを踏まえ早期リタイアのための必要額総額をどう考え、どうポートフォリオを構築するべきなのかという話になると思います。

なぜ、早期リタイアを志したときに株式投資や不動産投資が運用の選択肢の一部として浮上してくるのかと言えば、その理由のかなりの部分が、起こり得る将来のインフレに対してどう対応するのかというポイントだからだと思います。株式投資も不動産投資も完全ではないかもしれませんが、長期的にはインフレの影響とリスクに対して備えられる投資ビークルとみなせると思います。例えば、企業が商品を販売して利益を上げているとすれば、インフレが起こった時には、基本その企業の販売商品の価格も基調として上昇し、その企業の利益もインフレにある程度連動し上がることが一般論として想定できます。そして様々な企業の商品の価格が基調として上昇しているときには、人口減少その他で土地も家も余って仕方がないとかいう特殊要因等がなければ、家賃等の不動産関係の価格も上昇傾向になるのが自然です。

実際、超長期の内外資本市場において、程度の差はあれど株式のリスク資産は長期のスパンではインフレ率をはるかに凌駕するリターンを叩きだしてきたという統計実績があります。不動産については、前エントリーで述べたような理由で、株式のようには自明な形でインフレに勝ってきたことを示すことがなかなかに難しいですが、土地の値段の過去推移等の統計を参照するに、リスク資産の本質として基調としては程度の差こそあれ、株式資産と似たような推移を示してきたのだろうということは容易に推定できると思います。当然、ローカルな地域、市場の極端な結果を回避するために、できるだけ世界分散ポートフォリオを構築するのが一般的には望ましいと思いますが、ここではリスク資産のリスク分散をどれだけ追求するかが主題では無いので、このポイントはさらっと終わりにしたいと思います。

なので、1点目の重要なポイントは、準備すべき資金が遠い将来に備えるものであればあるほど、起こり得るインフレに備えられるポートフォリオの構築が必要と見なされるケースが多くなり、必然的に株式や不動産等、インフレに対応して上昇していくことが想定できる資産を一部持つことが想定されることです。

このような状況においては、年間不足生活費かける必要年数といった単純な算式では決して測れない、複雑なポートフォリオがもたらす投資結果が十分か適切かといったことが問われるわけです。結局インフレに対し、早期リタイア資金のポートフォリオ内で対策を持つのか、持たないのか、もし持つのであれば、それは株式なのか不動産なのか、もし株式ならばその成果は長期投資のキャピタルゲインでそれを得るつもりなのか、高配当株式の年間配当金でそれを得るつもりなのかといったことが要検討項目として浮上せざるを得なくなります。

そして早期リタイアのための準備資金の一部で例えば株式ポートフォリオを保有し、この株式ポートフォリオのキャピタルゲインでインフレに備えることにするなら、この部分は流動性資金として取り扱うことはできず、もはや年間生活費かける必要年数の単純な数式で準備資金の十分性や適切水準かどうか測ることは適切ではなくなる可能性が出てきます。

次にこの先に必要となると個人的に考えている重要ポイントがもう一つあるのですが、また長くなってしまいましたので、この点については次のエントリーで書いてみようと思います。

早期リタイアの必要資金の考え方において重要な2つのポイント(その2)

 

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