前エントリーで、早期リタイアのための必要資金を考える場合に通常あまり触れられないポイントではあるが、重要と考えられる2つのポイントについて書き始めました。
早期リタイアの必要資金の考え方において重要な2つのポイント(その1)
前回は、状況や考え方にもよりますが、早期リタイアの必要資金にはインフレ対応や抵抗力を持つことが必要なケースが多々考えられ、そういった場合は株式や不動産等、リスク性資産を一部持つ必要があるので、それら資産については流動性の不足や長期投資の必要性から、すぐに引き出して使える流動性資金としては考えれられないケースが多く、こう言った資産を含む場合には、早期リタイアの必要資金は年間必要資金かける必要年数という単純な算式で考えることはできないというポイントについて書きました。
今回はさらに進んで、こういう単純ではない性質の必要資金に対して典型的に適用されるリスクマネージメントの考え方について書いてみようと思います。
とまあ、もったいつけて書いている感じですが、書きたいことは単なるアセット・ライアビリティ・マネージメントの考え方です。ここでのアセットは早期リタイアのための必要資金で、ライアビリティは自身と家族等の必要生活費や将来出費のうち、国やその他の機関から年金等で支払われない部分です。つまり、早期リタイアのための必要準備資金の将来充当先のことです。
将来のリスクは、将来のライアビリティに対し、アセットからのキャッシュフローが必要十分でないことと定義されます。逆に言うと、アセットから得られる毎年のキャッシュフローで毎年の必要資金需要をちゃんとまかなえればOKなわけです。これが不足していたら、例えば定期預金や株式、不動産を不利な価格で売りさばく等が必要になる可能性があり、必要原資が毀損してしまうリスクを背負うこととなります。逆にアセットからのキャッシュフローが必要金額を大きく上回り過ぎても、今度は再投資リスクにさらされることになり、そのタイミングで超低金利や大幅なマイナス金利に見舞われていたら、再投資先に困ってしまいます。つまり、必要性の大小や重要性には程度の差はあっても、毎年、必要な金額が、そのための準備資産が生成するキャッシュフローで過不足なくまかなえればそれはそれで理想的なわけです。
まあ、将来必要となる毎年のキャッシュフローも完全に判明するものではなく、事前に想定できないアクシデントによって急に一時金が必要になる事態に直面することもあるわけですから、このアセット・ライアビリティ・マネージメントについては、少なくとも早期リタイアのための必要資金を考える際には、当然ガチガチに適用すべきものでは無く、必要資金の量やその資金のポートフォリオの内容、アロケーションを考える際に、ゆるく意識されていれば十分かと個人的には考えます。
それでも、この概念を意識するなら、早期リタイアのための必要資金量を考える時に、全く単純に必要年間資金かける必要年数のような算式では、必要資金の量を考えるには十分ではないと思います。
例えば、将来のインフレに対する十分な抵抗力を早期リタイアのための資産ポートフォリオに求め、一部資金を株式に投資してそこからキャピタルゲインを得ることによってインフレ対応することを想定するなら、その株式に投資する一部資金については、リスクテイクによりそこからインフレをはるかに上回る投資成果を得るために相当程度長期投資をする必要がある可能性を想定して、その間の期間中は全く使用不能な非流動性資金として考える必要があると思います。
その場合には、非流動性資金がキャッシュインフローとして使えない期間中は、その他の資金で必要キャッシュフローをまかなうことを想定して、必要資金のポートフォリオは適切にデザインする必要があるわけです。
こういった点を考え合わせなければ、早期リタイアのための必要資金の量が果たして十分であるかは判断できないものと思います。そして、これらの点が、早期リタイアのための必要資金が議論される際に、典型的に触れられない、あるいオミットされている部分だと思います。
なぜ、これらのポイントが通常オミットされるかと言えば、それはおそらく高度に複雑すぎる議論になってしまい、また個々人のリスク許容度や優先順位及びリスクに対する考え方や対応方針等によってその必要性が天と地ほど変わり得るからだと思います。
でもおそらくは、ただの記事上で、真剣に早期リタイアを想定したり実際に早期リタイアに踏み切ったりしない、机上の議論を行う人々はともかくとして、実際に真剣に早期リタイアを考えている人々は、無意識にしろ意識的であるにしろ、このような重要ポイントを踏まえた上で、早期リタイアのための必要資金の資金量やポートフォリオ等について考えているはずだと思います。
なので、早期リタイアを実際に実行した一人として、自身が早期リタイアのための必要資金を考えた際に重要ポイントとして当然のように意識した2つのポイントについてエントリーを書きました。
当然のことながら、この重要と考える2つのポイントについての対応方法は、そのポイントが想定するリスクについての個々人のリスク許容度や考え方に大きく影響を受けるだろうことは想像に難くありません。極端な話、将来の起こりうるインフレへの対応方法は、将来の生活費等の調整等、ライアビリティ側の調整であったり、再就職等の人的資産での対応だったりする場合があり得て、このリスクは人によっては対応すべきリスクでは全然無いという結論も、場合によって当然に有り得ると思います。
それでも、このリスクを踏まえた形で、早期退職のための必要資金量を考え、準備資産のポートフォリオを考えていく必要がある方々に向けて、当エントリーが何らかの刺激やヒント、示唆を与えることができれば、私としては非常に幸いに思います。
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