株式投資?不動産投資?早期リタイアのための投資戦略(その5)

By | 2016年4月5日

前エントリーの「株式投資?不動産投資?早期リタイアのための投資戦略(その4)」の続きです。

株式投資?不動産投資?早期リタイアのための投資戦略(その4)

前のエントリーまでで、株式投資は参入障壁が低く、β投資フレンドリーでそのお陰でα投資のハードルが高くなっており、逆に不動産投資は参入障壁が高く、β投資は実質不可能に近くて、弱肉強食のα投資の世界であるが、αのチャンスは市場の仕組み上、株式市場よりも期待できるというところまで書きました。

今回は、今までの話とはちょっと違った株式投資と不動産投資の違いについて触れてみたいと思います。それはレバレッジに関係する話です。

株式投資、不動産投資ともにレバレッジ投資を行うことは可能ですが、その時の条件はかなり違います。何が違うかと言いますと、主にレバレッジのポジションの測定やレバレッジ投資成果の測定が時価ベースか簿価ベースかという違いです。株式の場合は、レバレッジ投資を行いたいと思ったら、証券会社の信用取引を使うのが普通です。そこでは、レバレッジ投資にかかるすべての管理が時価ベースで行われます。

それはすなわち、投資先の株式会社がどんなに堅調に利益を創出していたとしても、例えば海の向こうの金融恐慌の影響を受けて足元株価が半分になってしまうといったケースに仮に遭遇したとすれば、もし2倍のレバレッジポジションを持っていたらそこでアウトです。口座内の全財産の時価総額は理論的にゼロになりますので、そこで全ポジションが決済されて終わりになります。透明な時価という客観的測定基準があるだけに、口座の維持の可能性測定は時価ベースで行われ、投資先会社の堅調な利益創出やそれに基づく将来の配当金分配の期待などお構いなしです。

一方で不動産投資の場合は、レバレッジをかける場合には、銀行やその他の金融機関による融資となるのが普通です。このレバレッジの源泉となる金融機関の資金貸付の場合は、不動産の時価が動いたからといってある日突然強制的にポジション決済されることはなく、不動産の賃料で収入が上がって貸付金が順調に返済されている限り、何の問題もなく不動産投資のレバレッジポジションを継続することができます。

この部分の株式投資と不動産投資の差が、レバレッジ投資に対する両者のスタンスに決定的な差異をもたらします。株式投資の場合はレバレッジポジションを継続できるかどうかは市場が決めるものであって自分ではコントロールができません。また投資先の会社に何の落ち度がなくても、アメリカの金融会社の野放途なリスキー投資による金融恐慌や、中国の企業群の見境のない過剰投資による酷い不況だとか、自身の責に帰するものではない不可抗力によって退場させられることがありえます。なので、単なる博打的な運用ではなく、リタイア用資金の株式による運用の場合は、多くのケースでレバレッジ運用はご法度となります。人生は何度もやり直せるものではないので、自らで管理できない要因によって口座残高が吹っ飛んで退場させられる可能性のある投資戦略はなかなか取れるものではありません。

他方、不動産投資の場合は、レバレッジポジションが他者が勝手に決める時価に基づき強制決済されて退場させられるような仕組みでないため、株式投資とは180度異なり、金融機関による資金貸付を受けてレバレッジポジションを構築することにより、少ない自己資金により大きなポジションを構築して、投資案件の自己資本利益率、つまり投資のリターンを向上させることは典型的に行われます。

つまり、早期リタイアを目指して株式のレバレッジポジションを構築してリターンの期待値を高めようとすることは、通常は命知らずの行動とみなされることが多いですが、不動産投資の場合は、投資案件が優良な案件である限り、金融機関による貸付を元手にしたレバレッジポジションは、不動産投資の成功スピードを加速するための普通の手法として使用される方法になっているという違いが生まれています。

当然のことながら、株式、不動産ともにレバレッジのポジション管理が時価であろうと簿価であろうと、投資先の案件が優良であるかどうかは非常に重要で、不動産のレバレッジ投資の場合も空き家続きで収入が入ってこなければ、貸付の返済ができずにレバレッジ投資は破綻することがあり得ます。それでも、時価で強制決済されるような仕組みでなければ、不可抗力的な外部要因や、市場の極端な熱狂と悲観によって有無を言わさず機械的に強制退場させられることはなく、投資のファンダメンタルが確かであれば、レバレッジがかかっていてもその成果はかなり計算が立ちます。

この部分は、明確に不動産投資が株式投資に比べて投資家にとって好ましい部分なのではないかと思います。この部分が株式投資と比べて非常に有利で、上手な不動産投資家はレバレッジでその成功を加速させることができるので、例えば株式投資と違って小口投資で分散することが難しかったり、世界中の不動産投資案件に地域分散することが難しかったりして、いわゆる現代投資理論的なリスク管理とリターン管理が難しかったりするというデメリットがあるにもかかわらず、早期リタイアのための投資戦略としてメジャーな手法として確立しているのではないかと私は考えています。

早期リタイアのための投資戦略としての株式投資と不動産投資についてその対比を行った場合の重要ポイントについて、以上の通り5つのエントリーでまとめました。当然のことながら、これだけで両者の投資の本質の対比が適切に行えたはずもなく、これらのエントリーで触れることの出来なかった重要なポイントもいくつもあるはずです。また、所詮は限られた1人の人生のごく一部の期間を割いての経験や知識の範囲内での考えですから、あちこちに至らない部分があるはずです。

それでも、この一連のエントリーが、これから早期リタイアを志す方や今まさにその道中におられる方に対して何らかの示唆、あるいは検討のための参考になりましたら幸いに思います。

 

 

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