Monthly Archives: 5月 2018

なぜ、部品発注や部品会社業績からiPhone売上台数、Apple四半期決算を読むのが敗者の戦略なのか

表題の件、個人的には書くまでもなく至極当然の話なのではありますが、今回の日経をはじめとするメディア、マスコミやアナリストの大失敗を経ても、世間では特段の学びも進んでおらず、インターネット上では部品会社業績からの早くも新たなゲス(推測)が始まっています。

部品発注、部品会社業績から最終商品の販売成果を推測する敗者のゲームはこれからも続きます。賢い投資家になるためには、こんな敗者のゲームに捕まることなく、一刻も早く卒業すべきだと思います。

そこで、この部品発注、部品会社業績から最終商品の販売成果を推測するゲームのリスクと問題点について、簡単にまとめておこうと思います。

 

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部品発注から最終商品の販売業績を推測するゲームをする人は、部品発注量が部品出荷量、最終商品生産量、最終商品出荷量と最終商品販売量に正直に連動することを暗黙に仮定しています。ですが、これがいつも成り立つことは誰も保証してくれず、自分で確認するしかありません。

これは、書くまでもなく不可能です。

部品発注されても、その通り部品出荷されるかは不明で、順調に部品出荷されてもその他の部品が何らかの理由で止まったり、今回のAppleの事例のように何らかの理由ですぐに最終商品生産に使われなければ最終商品生産は部品発注の流れより遅くなります。逆にこれも今回のAppleの事例のように短期的に貯蔵していた部品在庫で最終商品生産すれば部品発注の流れより多くの最終商品が生産されます。生産された最終商品は船が止まれば生産と同じスピードでは出荷されません。出荷された先では飛ぶように売れて棚が空になりかけているかもしれず、逆に全く売れずに棚がつかえているかもしれません。

問題はこれだけに留まりません。部品会社は競合する代替部品会社との競争に負けつつあり、受注割合を減らしていたり、受注単価を減らしている最中かもしれません。これらのことが全く起こっていなくても、部品会社がAppleにのみ商品納入しているのでなければ、Apple以外の他社の受注が増減している可能性もチェックしなければなりません。特に今のような、中国での極端な市場不振により、OppoやVivoの二桁マイナス成長とたくさんの弱小中国メーカーの対前年マイナス50%とも言われる局所不調がある場合には、この可能性の有無のチェックは欠かせません。

当然のことながら上記の記載がチェックすべきことのすべてではありません。例えば製造時歩留まりの変化等の、外部から確認することが極端に困難な要素もあります。

果たしてこんなチェックを全て行うのは現実的でしょうか?そんなわけはありません。

これを全てできる人は、世の中の全ての情報を得ることができてその情報を全て適切に処理できる人、すなわち神様だけです。

部品発注や部品会社業績で企業業績を推測したり報道する、マスコミや一部アナリストが度々こっぴどい間違いをするのは、当たり前なのです。敗者のゲームをしているのだから。

間違っても資産を増やして早期リタイアしたいと言った投資家は参戦するべきではないゲームです。

私は、昔この愚かなゲームをして市場が致命的な間違いをしていることが明らかな場合に、そのノイズで下がった株価を利用して安い価格で株を買うのに利用したことはあると思いますが、自身で積極的に部品発注情報、出荷情報等を利用した投資戦略を立てて実行したことは一度たりともありません。正直、バフェット式の集中投資、安全域を確保した長期投資の場合は、得られるリターンは大抵3倍〜5倍以上とかであって、こんな部品出荷情報などを利用して仮に運良くかつ首尾よくリターンを得たとしてもそのリターン幅は5%とか10%くらいのものです。かける労力と取るリスクに対し、バカらしくなるくらいのローリターンなのです。

バフェット氏が今回言ったセリフを翻訳、意訳すると、「3ヶ月間に売れたiPhoneXの台数を予測するなど、お前らバカなのか?」となります。そのビジネスに確固たる堀はあるか、その堀は長期の将来も継続する性質のものか否かを見極めることに比べれば、確かに本当にどうでも良いことです。

 

 

 

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良いサブスクリプション型の読み放題ニュースサービスができないかな

当ブログでもエントリーの中で事例をあげているように、株式投資をしている場合は、投資先の事業の継続的な分析、評価以前に、新聞や報道、インターネットニュースに存在する様々なノイズに引っかからないようにする必要があり、報道の中にある嘘や誇張、誤りや論理矛盾等を見破ったりする必要に迫られるケースがあります。

複雑なケース、単一の新聞社だけではなく多くのアナリスト等も一斉に騙されるこんなケースの場合はともかくとして、例えばインターネット上のニュースによくあるのが、単純にクリック目的と思われる、表題をわざと誤解を生みやすいものにしたり、極端な表現をしたり、分かりにくくしたりしているもので、内容を見にクリックするとがっかりする性質のニュース記事がたくさんあります。またクリックするとがっかりするものだけでなく、ニュース記事を全部読んだあとでがっかりするパターンもたくさんあります。例えばなぜ何々なのかという見出しで、最後まで読んでも理由が書いていないだとか、理由になっていないとか等です。

こういった、クリック目的や最後まで読ませる目的で、読者の時間を不当に奪うだけのニュース記事が非常に多く、インターネット上から情報を得るプロセスには非効率性にあふれています。

 

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なので、アップルがサービス開始すると噂されている、サブスクリプション型のニュースサービスに期待しています。特に、記者や報道機関のとにかくクリックさせて、記事を見させ読ませて広告を読者の目に入れてクリックさせたいというゆがんだ目的が、読者の有益な情報を得たいというニーズに全くマッチしていないのが、現行のインターネット上のニュース記事の問題点と認識しています。なので、こういった記者や報道機関側の歪んだインセンティブのない報道供給の場が欲しいと切に願っているのです。

サブスクリプション型のニュースサービスであれば、中身に広告を一切入れる必要はないし、記事を読ませれば勝ちの仕組みではなく、例えばサブスクリプション読者1人につきに役に立ったボタンを月10記事まで押すことができ、役に立ったボタンを多く押してもらった記事に読者が支払った料金が多く配分される仕組みにするとかで、良い記事、役に立つ記事ほど記事報酬が多くなる仕組みにすれば、最初に書いたような、くだらないクリック目的、記事を最後まで読ませる目的の記事がなくなり、煽り等で内容が貧困で役に立たない記事が淘汰されてなくなっていくのではと思うのです。

それならインターネットニュースではなく新聞記事で良いではないかと思われるかもしれませんが、当エントリーのリンクに貼っているように、様々なデマや誤報の発信源は実は新聞報道であることがとても多いのです。なので既存の新聞報道の、十分な調査と裏付けを得ずに、また結論ありきで書かれるゆがんだ報道態度の記事が速やかに淘汰される仕組みの新しい場が欲しいのです。というわけなのでサブスクリプションサービス内では役に立ったボタンだけでなく、月一定数の役に立たなかったボタンとか有害だったボタンがあっても良いかもしれません。

Appleがちゃんと中抜きしてくれれば、記者や報道機関がサブスクリプション読者になって役に立ったボタンを自社の記事に集中させても、サブスクリプション料よりも少ない金額しか報酬として得られませんので、不正すればするほど損失がかさんでいくことになり、不正が自然に抑制、防止されるのではないかと思います。

別にAppleでなくても良いのですが、どこかで良い記事や記者、報道機関が報酬を多く得て儲かっていくニュース報道、記事の場が育って欲しいのです。そのためには月何千円でも喜んで払い、悪貨が良貨を駆逐していく場ではなく、良貨が悪貨を駆逐していく健全な場が育つことにいち読者として貢献したいと切に願っています。

 

 

 

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日経や多くのメディア、アナリストたちはいかにしてiPhoneの売り上げを読み間違えたのか(2018年春ver)

標題の件、そもそも日経を代表として、各メディアは大体、毎年のようにiPhoneの売り上げを読み間違えてAppleの危機を煽り、その後のApple四半期決算で何のことはない、利益記録更新という好調な決算報告がなされて、あの騒動は一体なんだったんだという展開になるのが、もう毎年の恒例行事といっても良いくらいの定番の出来事です。今年も御多分に洩れずにちゃんとひと騒動ありましたので、その顛末と原因を当ブログで記し、後年への備忘録および教訓としたいと思います。

 

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事の経緯をざっくりと時系列で記載すると、以下のようになります。

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2017年12月末−台湾メディアがiPhone最高級モデルのiPhoneXの販売見通しを下方修正し、これまで5000万台を予定していたサプライヤーに対する同期の発注を4割削減し3000万台にしたと報道。

アップル、「iPhone X」18年Q1発注予定より4割減 鴻海も今日からワーカー採用中止

2018年1月末− 日経がiPhoneXを1〜3月計画比で生産半減し、4000万台生産予定を2000万台へ引き下げと報道。

iPhoneX生産半減1~3月計画比、高価格で不振

以降、日経をはじめとするメディアが「iPhoneXは販売が失速し、Appleの当初予定に比して極端な不調」とのトーンで、サムスンのOELD業績等、部品各社の不調の要因として繰り返し、iPhoneX失速、販売不調を各記事で強調。

2018年4月下旬ー各社2018年第1Q(1〜3月期)の四半期決算発表が相次ぎ、そこでAppleサプライヤー各社が、ハイエンドスマートフォン大手顧客の影響による1〜3月期もしくは翌期以降の業績不振や下方修正を報告。これを報道各社はiPhoneXの失速、不振が原因と報道。これを受けて多くのアナリストはAppleの1〜3月期iPhone販売台数見込みと四半期決算内容見込みを下方修正。Appleの株価は大幅下落。

2018年5月2日ーAppleの四半期決算発表で、前年同期を上回る好調なiPhone販売台数と売上および利益の2桁成長、サービス分野が対前年3割強の成長、ウェアラブルを含むその他分野は対前年4割弱成長といった驚異的な成長、翌四半期のアナリスト予想を明確に超える売り上げ見込みと16%の増配、$100bの追加の自社株買いを発表。これを受け、Apple株価は急進。2日時間外取引以降、決算前急落分を全て戻す株価上昇を演じる。

2018年5月4日ーその後、Appleが1月〜3月に自社株買いを強力に進めていたことがニュースに。バフェット氏も1月〜3月期にApple株を7500万株買い増ししていたことが報道されると4日にはApple株はさらに急進し、上場来高値を更新した。
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と、ここまでが、今回の日経をはじめとするメディアとアナリストたちの壮大な間違いの時系列記録です。

では、これほど多くの関係者が揃いも揃って見事に間違えてしまった原因はいったい何だったのでしょうか。

答えはAppleの2018年2Q(1〜3月期)のEarningsCallの28分頃から話されている内容にあります。

Apple Financial Results – Q2 2018

アップルは今回Q中に部品の調達を変更したことがアナリスト質問に対する回答として述べられています。

在庫(インベントリー)が今Qに急増したことについてのアナリスト質問に対し、Appleは今Q中に、現在のマーケット状況を踏まえいくつかの部品の購入決定をし、コンポーネントを大量購入し在庫として保有したことにより一時的に部品在庫が急増したのであり、時間を経ることでこれは解消されると回答しています。

詳細な理由については触れられてはいませんが、部品の有利な価格での調達や部品調達の将来リスクの回避といった何らかの理由で、今までとは異なりコンポーネントを早期に大量に調達し、その後の十分な部品確保後に部品注文量を急減させて今に至るのだろうと推測されます。

つまりは、最初の台湾メディアと日経は、今回の前倒しの多量の部品調達を初期のApple経営陣のiPhoneXの強気の販売見込みの現れと誤解し、また多くの調達を終えてのその後の部品注文減少をiPhoneXの早期の販売失速の現れと間違って解釈してしまったのです。そして、その後の各部品会社は後者のAppleからの部品調達減少により今後の業績予測の下方修正を行い、それを受けてアナリストたちはこれをiPhoneXの早期失速やiPhone販売不調の証拠としてとらえてしまい、数多くのアナリストがiPhone販売台数不調、Apple決算の不調の予測レポートを出し、目標株価の引き下げを行ってしまったのです。

結果、アナリストたちはApple好決算の直前にApple株に対する間違ったネガティブな情報を広めてしまい、Apple四半期決算発表後に、サプライヤーがノイズを出したとかサプライヤーへの発注減少をAppleのiPhone販売減少のサインと捉えてしまった等の釈明と事態の収拾に追われる羽目になったと報道されています。まさに、Apple株が上場来最高値更新という最高の結果が得られる直前の最悪のタイミングでApple株売りのサインを顧客に出してしまったわけです。

過去にクックCEOが、サプライチェーンは複雑でサプライヤー情報からAppleに何が起こってるか把握することはできないとの忠告があったことはまだ記憶に新しいですが、まさにその通りのことが起こったことになります。Appleがサプライチェーンで行っていることが理解できず、早期の部品確保の一連の行動を、強気の販売見込みと早期のiPhone販売失速と誤解してしまったことが今回の騒動の本質です。

では、この混乱、誤解とミスは回避不能だったのでしょうか?実は決してそんなことはありません。前提知識あるいはその調査と常識的な感覚、どんな仮説に対しても検証により証拠を求める健全な態度等があれば、このような失敗は未然に防げるものです。

まず、最初の台湾メディアと日経の報道についてです。台湾メディアはiPhoneXの1Q当初生産予定を5000万台、日経は4000万台としています。この台数は合理的水準でしょうか。Appleの昨年1〜3月期のiPhone販売台数は5000万台をちょっと超える程度の水準です。もしAppleの今年の1〜3月期のiPhone販売台数が昨年並みとするならば、今年の1〜3月期のAppleのiPhone販売台数全体に対するiPhoneX販売台数比率は、台湾メディアの数字ではほぼ100%、日経でもほぼ80%となります。この数字は常識的でしょうか。世界的には裕福でiPhone比率の高い日本でもiPhoneXは10万円を軽く超える端末で、一括購入ではない分割販売では審査が通らないケースが頻発するはずです。まして海外ではもっと状況は厳しいはずです。もっと安いiPhone8やiPhone7がラインナップに存在するのに、審査で止まってしまって分割購入など実質不可能な人が多くいるはずなのに、全体に対するiPhoneX比率が80%以上になるはずがないことは、まともな常識がある人にとっては火を見るより明らかなことなのです。こんな子供でもわかりそうなことがApple経営陣にはわからないのだと、Apple経営陣はまさに愚か者の集団なのだと考える人は間違いなく頭がどうかしています。

なぜこんな、ちょっとでも常識がある人ならわかりそうなことが台湾メディアや日経にはわからないのかといえば、Appleの前年同期のiPhone販売台数が5000万台ちょっとだったという事実を知らず、かつそれを調べようともしないからです。なぜ大の大人がインターネットでチョチョっと調べればすぐにわかることを調べないのかと言えば、台湾メディアも日経も、求めているのはスクープであって、報道内容の正しさではないからです。これらの会社はスクープのためには正確で正しい報道をするための徹底的な調査をするインセンティブは持ち合わせていないのです。

というわけで、今回も台湾メディアと日経の報道の間違いを見破るのは簡単でした。

次に多くのAppleのサプライヤーの1Q決算の内容と多くのアナリストのApple格下げや目標株価引き下げについてです。これは台湾メディアや日経報道よりもちょっと見破るのはむずかしかったかもしれません。でも公開情報だけでちゃんと見破ることができました。この各部品会社の不調がiPhone不振によるものであれば、その流れは以下のようなものであるはずです。

(iPhone売り上げ不振)→(iPhone完成品の在庫急増)→(Appleより部品会社への発注減少)→(部品会社の次Q見通しの引き下げ)

つまり全てのトリガーはAppleがiPhoneの売り上げ不振を知覚してから始まる一連の現象であるはずです。これが全て起こった後に部品会社の決算発表があったのですから、2018年1Q(1〜3月)の売り上げにはAppleが知覚可能な深刻なiPhone販売不振が起こっていたはずなのです。

ですから、調べるべきは、2018年1〜3月の販売統計です。この統計数字の中に果たしてAppleが知覚できるほどのiPhoneの販売不振があったかどうかを確認すれば、アナリストの描くストーリーが真実かどうか判断できます。

公開された調査会社等の1〜3月販売統計はApple四半期決算前に複数確認することができました。それらを全て付き合わせた結論は、それらの統計数字にiPhone販売の不振を示す証拠はないというものでした。実際には逆にiPhoneやiPhoneXの好調を示す統計結果の方が多かったのです。もっと具体的に言うと、調べた調査会社統計のうち1社を除き全ての会社の統計数字が1〜3月期のiPhone販売好調の方向を示していました。しかもApple不調を主張する統計会社は何と根拠となる同期間のApple関連統計情報の具体的数字を全く示していなかったのです。

結局、逆を示す統計結果は容易にいくつも見つけられるのに、同期間のApple不調を具体的に示す統計調査結果の開示数字はとうとう1社たりとも見つけられませんでした。

これにより多くのアナリストが格下げ、目標株価引き下げを行った根拠に疑義が生じ、これらアナリストの判断は誤りの可能性が非常に高いと事前に判断することができました。

上記のように、毎回の日経をはじめとするメディアやアナリストたちの間違いは合理的に見抜くことが可能です。必要なのは、常識と調査等の労力を厭わない姿勢、あらゆる仮説に検証を行い証拠を求める合理性と論理的態度です。

では、今回の事例を反省して、日経をはじめとするメディアやアナリストたちは今後は間違いを犯さないのでしょうか。これは全く期待できません。日経をはじめとするメディアはスクープのためには正しい内容の報道をすることを2の次にし続けるでしょう。アナリストもしばらくは同じ間違いをする人は減るでしょうが、過去もサプライチェーン情報に頼りすぎて、ミンチーコーが大失敗したケース等あり、この手の間違いは相も変わらず繰り返されています。将来も必ず起こると思っておいたほうが良いでしょう。

今回の事例でも分かる通り、アナリストがテレコンで質問するまで、Appleの部品発注行動の意図など、部品会社等も含め、外部から分かりようがありません。意図のわからない現象を、マスコミ等の外部がスクープのため、無理矢理にビジネス不調という結果になるように勝手に説明をつけただけなのです。要は結果ありきなので、その勝手説明の内容には検証すると矛盾が噴出し、マスコミやメディアの憶測に何らかの間違いがあることはいつも簡単に見抜けるというだけのことなのです。

ここまで今回の経緯をちゃんと見た方ならば、クックCEOが忠告した通り、サプライヤー情報に基づき企業業績や決算の予測を行うことは不可能への挑戦と言ってよいということがわかると思います。それなのに、日経等のマスコミや一部アナリストたちはろくな検証行為をしていません。これはエベレストに登るのに登山用道具を全く用意せず、必要な訓練を全くせずにトライすることに似ています。はっきり言ってしまうと、これらの人種は自分が何をしているか、自分自身で理解できていないのです。

そんな人種は、何度でも同じ間違いを起こし続けます。毎年、無残な失敗という同様な現象が飽きもせず起こるのには理由がちゃんとあるのです。

なので、今後のためにも、こういった過去の間違いの記録は風化させずに、必要な場合はその度に思い出して、合理的な態度でその間違いを将来も見破って行くことが、投資家には求められます。

このエントリーが自身を含む将来の投資家の判断に資することを願っています。

 

 

 

 

 

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ゴルフ – 左肘を伸ばさない打法のもう一つのメリット

前回のエントリーで、ゴルフでの左肘を伸ばさない打法の個人的なマニュアルをまとめました。

そこで、自身でたどり着いた打法の説明は完結しているのですが、この左肘を伸ばさない打法のもう一つの大きなメリットを書き漏らしていることに気づき、この追加のエントリーを書くことにしました。

そのメリットとは…

 

 

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単刀直入に書きますが、インパクト付近でクラブヘッドを飛球線に沿って直線的に動かしやすくなることです。

インパクト付近で左肘を曲げて先行させ、左手首を手のひら側にわずかに曲げながらインパクトを迎えることでクラブヘッドを直線的に動かせることは、この動きをしたことがない人にとっては自明なことではないかもしれません。でも実際、クラブを持ってこの動きをしながらゆっくりとインパクト前後をクラブヘッドをなぞるように直線的に飛球線に沿って動かしてみれば、すぐにわかると思います。

従来の左腕を伸ばす伝統的なスイングをする限り、この飛球線に沿った直線的なヘッドの動きは実現できません。無理やり実現しようとすると頭とスイング軸を右から左へ大きく動かすしかなくなります。

この点が左肘を伸ばさない打法のもう一つの重要なメリットだと思います。左肘を伸ばして左腕の長さを固定する限り、クラブヘッドの軌道は円運動となり、飛球線とクラブヘッドの軌道の向きが合致するのは一瞬となります。物理的にはその一瞬のタイミングでクラブフェースが飛球線と直角になっていて、かつそこでインパクトの衝突が起こってはじめて、ボールはストレートに飛ぶことになります。これを安定的に実現するのが不可能に近い難易度なので、わざとそこから外れるようにして、フェードやドローを持ち球にするのが、ゴルフでは定番なのだと思います。

左肘を曲げ、かつインパクト直前から左肘の曲げを強くしていくことで、インパクト前後に直線的なヘッド軌道を作ることができ、出会い頭ではなく狙ってストレートに近い球を打てるようになることは、かけがえのないメリットではないかと思います。

フェースの向きもインパクト前後で安定して同方向で推移させることが容易になるのでドローやフェードもとても打ちやすくなります。

最初にこの左肘を伸ばさない打法にトライしたときは、体全体を使った打法から左腕で引き込んでいく打法に変わることにより、ヘッドスピードの減少と飛距離の低下を覚悟していたのですが、これは全くの杞憂に終わりました。慣れると体全体を使ってスイングしていたときと遜色ないヘッドスピードを出せるようになり、またこの打法による適切なヘッド入射角がもたらすバックスピン減少と安定的にしっかりと捕まった球が打てることの相乗効果により、最大飛距離は以前の若い頃と全然遜色ないし、平均飛距離は吹き上がったり大きくスライスしたりといったことが無くなった関係で、かえって向上しているかもしれません。

1つ言えるのが、この打法が今実現できているのは、もしかすると現代的な軽いクラブのせいかもしれないということです。私はパーシモンとスチールシャフトの組み合わせでドライバーの重さが380グラムとか420グラムとかもある時代もプレーしていましたが、その時代のクラブで今行っているスイングをそのまま行うのは、かなり困難を極めるかもしれません。若ければできなくはないとは思いますが、それでも強靭な左腕が必要なのは間違いないでしょう。今、早期リタイア後に軽々このスイングができているのは、現代の軽いクラブの恩恵がとても大きいと思います。

そういう意味でクラブの進化にも感謝しきりです。

簡単にフェード、ドローが操れて、大きなスライス、フックとさよならできるとゴルフはとても楽しくなります。

それにしても、こんなところにも研究に値する面白い世界があるとは。早期リタイア、まだまだ奥が深いと感じます。

 

 

 

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