別のエントリーでも書いた通り、仮想通貨のバブルとバブル崩壊の事例が、まさに歴史的に人類が何度も通ってきた道だなあと強く感じます。また、インターネット上でこのバブルとバブル崩壊を演出することになった、仮想通貨の伝道師とも呼べる人々が、見事にバブル崩壊して行く資産に捕まってしまい、このまま仮想通貨への投資を続けていても穴の空いたバケツに水を入れているようですので、次なる手段としてのシステム投資に手を出している様子が見受けられます。
これがまた、投資の初心者が投資の本質に辿りつけずに、最初の失敗から次の失敗へと進む定番の道のように、実際にたくさんの回り道をしながら投資の本質にたどり着いたと思っている私のような人間には見えるのです。
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投資の初心者のうちは多くの人が、当然のことながら市場の変動が利益の源泉と考えます。そして、変動の大きい市場で勝負しようとします。そしてその本質を外した投資行動で早かれ遅かれ失敗します。
この失敗の後で考えることが、自身の刻々の投資判断に間違いがあったことが投資失敗の原因だというものです。なので、ひとりの人間の判断に基づいてポジションを構築、変更していくのではなく、機械的な判断で、かつ過去のトラックレコードで利益が出てきたことがバックテストで証明できるロジックを用いてシステム投資をすれば、今までとは異なりうまくいくはずというのが、投資の初心者の打つ典型的な次の一手です。
当然のことながら、これは全然うまく行きません。カーブフィッティング等といった技術的な落とし穴等もあってこの要素も大きいのですが、本質的にマーケットは自然現象ではないので、過去うまくいったロジックであるからこそ、多くの人がそれを将来も機能する可能性が高いと思って実行する、自分以外のマーケットの行動自体が結果的にそのロジックを機能させなくするフィードバック現象がマーケットには存在します。ですから自然現象とは異なり、過去のトラックレコードが将来を保証せず、逆に過去のトラックレコードが良いロジックであると広く知られれば知られるほど、将来のマーケットでは全然機能しなくなるといった現象が当然に起こります。
自身での投資判断を放棄して機械ロジックによる投資判断に切り替えても、間違いなくほとんどの投資家はこの分野でも成功を収めることはできず、無残な失敗や徒労に終わります。
こういったいくつもの的を外した紆余曲折を経て、最終的には多くの迷える投資家は、投資にはうまく行く方法はないものと達観して、投資自体を辞めてしまうかインデックス投資家となります。
これが典型的な初心者投資家の通る道だと、自身でもその初心者投資家の典型的な失敗の道を通ってきた者として実感します。
しかし、今ならその延々とした回り道の何が間違いだったのかがわかります。はっきり言ってしまえば、市場から利益を得ようとしたのが間違いの元だったのです。市場で安く手に入れたものを高く売ろうとすれば、市場での取引相手全てが、出し抜くべき競争相手となります。相手の損失が自分の利益となる、まさにゼロサムゲームになります。値動きの良い市場でなんとかうまく売買して利益を出そうとするその行為自体が敗者への道だったわけで、その判断が自身の判断だろうとも機械的ロジックによる判断だろうと、バックテストによる優良なトラックレコードがあったとしても、だれかを損させなければ自身が利益が出せない茨の道だったのです。
投資をそのようなものとイメージしている限り、投資の世界での成功はおぼつきません。でもこの無駄な回り道をオミットできる人間はバフェット氏をはじめとする、世界でほんの一握りの天才だけです。ほとんどの人はこの回り道を回避できないだけではなく、それどころか一生投資の本質には辿りつけません。
でも、投資をしているのに市場から利益を得ずに何処から利益を得るのかと、このエントリーのみを読んだ人は思うかもしれません。この疑問に対する答えは、当ブログの他の投資関連エントリーを読めば至極明らかなのですが、念のためにここでも再度記すと、投資のリターンは投資先の会社から得るのです。本源的価値についてのエントリーで書いた通り、株式会社の本源的価値は将来配当支払金額合計の割引現価ですから、投資先の会社のリターンは市場で売らずとも株主配当という形で、市場を介さずに得ることができるのです。
リターンを市場から得るつもりがないのですから、投資している間に見るのは他の投資家の当該株式に対する評価ではなく、当該会社のビジネス内容です。他人の評価である日々の株価によって投資対象の評価をせず、その株価を利用して投資リターンを得るつもりもないのですから、市場の楽観、悲観による極端な株価の騰落によって投資の成果が左右されることもありません。
システム投資を志向するということは、投資は市場からリターンを得るものであり、利益は市場でタイミングよく売買することにより得るもの、すなわち投資タイミングの下手な他者から利益は奪うものであるという態度の裏返しでもあります。市場に出入りするコスト、摩擦の存在により、このような態度で投資を行う者のうち半数を圧倒的に上回る者が敗者となります。投資で市場からリターンを得ようとすれば、こういう必然により過半数をはるかに上回る人々にとって投資は敗者のゲームとなってしまい、多くの人が延々と失敗を繰り返した後に、投資にはうまく行く方法はないものと最後に達観することになるわけです。
インターネット上の仮想通貨の伝道師は、資本主義の歴史の長さの分だけ飽きもせず出現した、投資初心者の典型的な回り道を演じていると、自身の長い投資経験から実感します。バブルとバブル崩壊のサイクルは仮想通貨による新時代も、長い長い過去の資本主義マーケットで繰り返されてきた出来事となんら変わらず、変わったのはインターネットでの愚かな投資アイディアの伝播の速さくらいでしょうか。昔と違って猛烈な速さで失敗できるので、その分だけ多くの方が早く投資の本質に到達できることを祈るのみです。
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