近年、投資信託の世界では AI投信というジャンルで、幾つものファンドが現れているようです。そして簡単に予想できるとおり、運用パフォーマンスは寂しいものとなっているようです。このエントリーでは、なぜ私がAI投信と呼ばれるジャンルがうまく行かないのかについて、個人的に考えることを書いてみようと思います。
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投資、特にインデックスファンドの優位性についてうたう書籍内でよく書かれているとおり、あるプロバスケチームが年間優勝した年にNYダウが上昇するといった事後的な相関はよく見つかり、この手の相関に基づき投資すると、当然のごとくうまくいきません。これはただの偶然の相関だからです。こんな例で説明されれば明らかなことでも、AIのロジックで投資を決めるというわかりにくいブラックボックスで包まれると、途端に投資過程が明らかで無くなります。
AIは、人間がどうやっても不可能な大量の計算に基づき、思っても見ない相関を大量に見つけ出します。でも、世の中には偶然の相関はおよそ無限に近く見つけることはできても、その中でのごくごく一部の必然の因果関係を証明して、意味ある相関を抽出することは今のAIには不可能ではないかと思います。
そう思えば今のAIがやっていることは、金の粒を求めて、無数の砂をさらっているが如き、まるで無駄な行為。そんな行為をやっているファンドのパフォーマンスは、丁半博打で投資を決めているど素人のごとく、運用費用の分だけベンチマークから劣後するパフォーマンスになることははじめから運命付けられています。
人間が優位性を持つのは、無限に発生し得る無駄な偶然の相関の案件から宝を探すのではなく、市場に起こっている現象から、仮説を立て、数多くの証拠と統計結果に基づいて論理的にその仮説の信頼性を検証する能力だと思います。
今のAIにはその能力はないと思います。また、この能力を発揮するには過去だけを見ていてはダメで、今まで経験したことがない、これから初めて起こることについての論理、推論、仮説を立てて検証できる能力が必要で、データを大量に瞬時に処理できることとは全く別の能力が必要です。
機械にその能力が備わってからが文字通りスタート地点であって、それでも全ての投資家のパフォーマンスの平均がベンチマークであること、そしてベンチマークパフォーマンスは企業業績に長期的に連動せざるを得ないことという純然たる帰結は動かせないので、遠い将来、機械にそんな能力が備わった時にも、人間には、その中で半分未満に入る優秀な機械、ロジックを見つける投資能力が必要になるのだと思います。どこまでいっても、AI投資だから成功するだとか、安直で安易な世界はやって来そうにないですね。
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