株式投資?不動産投資?早期リタイアのための投資戦略(その3)

By | 2016年4月3日

前エントリーの「株式投資?不動産投資?早期リタイアのための投資戦略(その2)」の続きです。

株式投資?不動産投資?早期リタイアのための投資戦略(その2)

前エントリーで、早期リタイアのために投資が必要となる場合に、メジャーな投資ビークルである株式と投資用不動産を取り上げ、双方に関する違いについて書き始めました。ちょうど、投資のαとβの話をしたところで終わってしまいましたので、その先を書きたいと思います。

投資に関するαとβの話は株式に限った話ではなく、不動産であってもその他の投資においても出現し得る概念だと思います。それではなぜ、このαとβの話を株式と不動産の違いのところで取り上げたかと言いますと、株式投資においてはαを取りに行く投資も、βのみを取りに行く投資でもどちらも目指すこと自体は可能だと思いますが、不動産においてはβを取りに行くことが非常に難しいという違いがあると思うからです。

株式の場合は市場に上場されてる株式は、市場が開いている時には成り行きでも指値でも注文を出すだけで購入可能になっており、ETFやインデックスファンドを買えば、例えば日経225指数やTOPIX(東証株価指数)に連動する投資成果を得ることも可能です。対して不動産の場合は、今でこそREITという商業用不動産やその他投資用不動産のパッケージへの投資を可能にするビークルが上場されていますが、例えば日本全国のある程度以上をカバーする投資用不動産全体の投資成果を受け取る権利を持った投資ビークルは存在しません。不動産の場合は、いきおい、例えばある場所のアパートやマンションといった特定の1つの投資案件に投資せざるを得ないわけです。不動産市況自体は非常に好調で、全体としては家賃が上がっても借りたいという需要が非常に強いといった好ましい状況であっても、例えば近所の買い物のためのスーパーが倒産して不便になったとか近くで人気があった良い学校が落ちぶれてしまった等の非常にローカルな理由で入居者が入らなくなり、個別投資案件としては残念なリターンになるといったことがここでは起こり得ます。これは株式投資でαを狙い、非常に有望な1社へ投資したところ、株式市場全体は好調に推移しているのに、目論見に反してこの会社のビジネスが傾いてしまって株式が売られた結果、損する投資になってしまったという事例と似ています。

株式に投資する場合は、βを得るための投資かαを狙う投資かは選択の問題ですが、不動産への投資ではβを得るための投資を行うのは実質的には困難で、通常は自動的にαを求める投資になるといったところがまず決定的な違いだと思うわけです。

通常、βへの投資は誰にでも実現可能ですから、例えば株式投資の場合であれば、誰にでもできる方法を採る場合は、βのリターンが得られるように市場平均に連動するインデックスファンド等に投資し、それでも不確定な投資結果のボラティリティを可能な限り許容可能範囲内に限定するために、世界の市場に分散する地域分散、投資するタイミングを分散する時間分散を駆使して長期にわたって投資し続けることにより、株式資産が持つリスクプレミアムの獲得を目指す方法を採ることになると思います。

株式市場のトラックレコードについては、市場価格ベースのリターンとしての株式指数のヒストリカルデータが、もし過去、その指数へ投資していたとしたらどうなったかの判断に利用可能です。株式配当受け取りの効果を含むリターンについても、例えば配当込みTOPIX指数のリターン等、過去の推移を確認することができますので、株式投資においては、βへの投資を過去行っていたらどういう結果になったかの統計的、歴史的な検証が可能です。その結果、この株式市場におけるβを取りに行く投資の有効性、すなわち預金等に比した結果の優位性が一定程度学術的に認められていると言える状況かと思います。

それに対し、株式のαを狙った投資については、例えばアクティブ運用を行うファンドの半分以上がインデックスファンドや株式市場指数に勝てないといった典型的な統計結果が示す通り、成果を出すのが非常に難しいことで有名です。早期リタイアを目指したり、維持したりといった場合に、市場参加者の半数未満に入る良い結果を目指せば、その目論見に反し仮に市場平均よりも劣った結果となったとしてもそれを受け入れる他なくなります。株式市場の場合はここからは選択の話で、βを取ることを基本にした投資戦略を持つ投資家もいれば、何らかのαを取ることを目指した投資戦略を持つ投資家も現れます。

これに対し、不動産投資においては、誰にも狙えるβを獲得する投資手法が実質的に存在しないことから、必然的にαを狙う投資アプローチになります。すなわち、特定個別投資案件に対し、入居需要は継続的にあって空室リスクが顕在化することはないか、建物のリフォーム、改築等継続的な追加投資資金はどれくらい必要になるかやその他もろもろの様々な内容がいかに有望か否かを見極めることが肝になるわけです。これは株式投資でαを目指す投資家が行うファンダメンタル分析と本質的に同じだと思います。

こういった株式と不動産の取り得る投資アプローチの違いは、メジャーな投資案件が公開市場に上場されていて透明な取引方法で誰でも取引可能な状況にあるかないかが究極のところ影響しているわけですが、これがあるかないかが影響を与える重要な要素がもう一つありますので、これについてはエントリーを分けて、また書きたいと思います。

株式投資?不動産投資?早期リタイアのための投資戦略(その4)
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