前エントリーの「株式投資?不動産投資?早期リタイアのための投資戦略(その3)」の続きです。
株式投資?不動産投資?早期リタイアのための投資戦略(その3)
前のエントリーで、メジャーな投資案件が公開市場に上場されていて透明な取引方法で誰でも取引可能な状況にあるかないかが株式と一般的な不動産への投資の場合の重要な違いであって、株式投資の場合はこの理由によって、βを取りに行く投資かαを目指す投資か選ぶことができるのに対し、不動産の場合はほぼ自動的にαを目指す投資になってしまう構造にあることを書きました。
それ以外にも、公開市場での取引であるかないかは双方の投資に重要な影響を与えていると思いますので、今エントリーではその点について書いてみようと思います。
証券取引所に上場している株式については公開市場での取引になりますので、流動性が著しく欠けていてかつマーケットメイキングが機能していない等の特殊な状況を除けば、その購入価格や売却価格は一定程度妥当な価格であることが構造上保たれています。寄り付き、ザラ場、引けといった発注のタイミング、あるいは指値での発注もしくは成り行きでの発注にしろ、基本買い手の買い指値と売り手の売り指値が出会うところでの値付けになりますから、例えば売り手がラッキーを狙って直前の価格や昨日の価格を極端に上回る指値で売りを出したとしても、成り行きの買い手はその凄まじく割高な価格で自動的に買わされるなんてことは通常ありません。実際は、まともな価格で売りを出した参加者と同じくまともな価格で買いを出した参加者が多くいて、それらの参加者の間で価格が寄り付き、成り行きの買い手も不利な価格で買うはめにならずに済みます。
これが中古不動産の購入を考えれば、売り手が仮にラッキーを狙って本当に妥当と思える価格の1.3倍の価格でとりあえず売りに出してみたとしたら、株式市場と同じ結果にはならない可能性があります。買い手に不動産の知識が十分になかったり、あるいは物件の重要な瑕疵を見落としたりしてしまえば、十分な経験や知識がある買い手なら決して買わない価格で物件を買うはめになってしまいます。
つまり、株式市場においては指値を入れている多くの市場参加者や、買いたいけど価格が高いので指値や成り行き購入発注をためらっている市場参加者、売りたいのだけど現在の値段が安すぎるので、売り注文を出すのを躊躇している市場参加者といった、顕在、潜在しているすべての参加者が今株式市場で寄り付いている価格に大なり小なり影響を与えていて、この機能により、全く株式の価格の妥当性を測る手段を持ち合わせない初心者やそもそもαを目指した投資をするつもりのないβ投資家が不利な価格で取引することになってしまわないように、価格形成を手助けしてくれる結果になっているわけです。当然のことながら、すべての顕在、潜在している市場参加者はそれぞれ純粋に自身のためにベストな行動を取っているだけなのですが、それが回り回って初心者やβ投資家を助けることにつながっているわけです。
したがって、公開市場での取引であれば通常、市場参加のための障壁が非常に低くなって、取引の安全性が上がるということが言えると思います。
これは別の言葉で言えば、初心者やβ投資家も、ベテランやα投資家のカモにならずに市場参加ができるということになり、これは逆に言うと、ベテランやα投資家にとって、取引相手の過失や知識の無さをもとにαを得ることが非常に困難なことを意味します。
こういう構造にあるから、株式市場からαを取ることを使命として仕事をしているプロの運用者の半分以上がαを取れないという憂き目に遭うのだと思います。
翻って、不動産取引においては、この公開市場が持つ透明性を有していない取引なので、構造上、取引のプロセスにおいてαを獲得するチャンスは株式取引よりも多く内在していると言えると思います。例えば本来ならもっと高い価格で売れる物件なのだけれども、売り手に一刻も早く現金化したい理由があってお値打ち価格で売りに出している物件を、やり手の不動産投資家ならば目ざとく見つけて、高利回り物件として非常に良好な投資成果につなげるかもしれません。
つまり、透明性があって参入障壁が低い取引であればあるほど、取引相手のミス等を期待しにくく、αが得られにくいといった形で、参入障壁の低さとαの得られやすさは一般に反比例する関係にあるのではないかと思います。
すなわち、ここまでの話で、株式投資ならば参入障壁が低く、知識、経験、ノウハウがなくてもβのリターンは簡単に獲得可能ではあるが、それだけにαを求め始めた瞬間に、偶然ではなく実力でαを得ることが非常に難しく、茨の道になってしまいがちだということになり、逆に不動産投資の場合は、参入障壁が高く、投資参加者の半分より上に位置する有能な投資家になる決意があってその努力をするか、そのための十分な能力を有しなければ、有能な参加者に逆にカモにされてしまうという厳しい市場ではあるけれども、有能な市場参加者であればα獲得のチャンスは株式市場よりも構造的に多く存在している可能性が高いということが言えるのではないかと思います。
もう一つ、重要と思っている早期リタイアのための株式投資と不動産投資の間の違いがありますので、また次のエントリーを立てて書いてみようと思います。
株式投資?不動産投資?早期リタイアのための投資戦略(その5)
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